ファインダーの向こう

Chapter3

 空の暗闇を見ると夜明けにはまだ早く、雪は降り止むことを知らずに埠頭に静寂をもたらしていた。


 朧げにも逢坂の視界が鮮明になってきたその時、何台もの車が埠頭に集まってきたかと思うと騒々しくブレーキ音を立て、ぞろぞろと人が降りてきた。


「いたぞ、こっちだ」


 そして機材を背負った者やカメラを下げた者が、それぞれ渡瀬と逢坂を物々しく取り囲んだ。


「な、なんだ……君たちは……っ!?」


 全く状況が理解できないと言ったふうに渡瀬が呆然としていると、人ごみを掻き分けて出てきた男がフラッシュを焚いて前に出てきた。


「渡瀬さん、今夜は今年最後の大スクープになりますよ、“渡瀬グループ社長の逮捕!? 密売と暴行の裏側”ってね。ついでだからオレの知り合いのマスコミ全員呼んできました」


「き、君は……新垣君じゃないか、なぜここへ? それに逮捕ってなんのことかな? 確か倉庫でおとなしくしているように言っておいたはずだけど?」


 渡瀬は集まってきたマスコミに顔を引きつらせながらも笑みを浮かべた。


「新垣君……」


 沙樹は突然の新垣の登場に目を丸くした。
< 160 / 176 >

この作品をシェア

pagetop