逃亡

ー6



「あの…」
「ん?どうした、真那?」

屋嘉部さんに引きずられて連れて来られた、都心の一等地。
ファッション雑誌に必ず目にするヘアーサロンの名前。

「屋嘉部さん…ここで切るんですか、って言うか、屋嘉部さんって何者何ですか!?」
「アハハ、何者って、真那面白いっ!!」
「わ、笑い事じゃないです!!
私、何も知らなくて、変な人に“知り合い何だけど”って騙されたらどうするんですか?」
「真那、部屋借りる位で、変な人に騙されるとかって想像力凄すぎなんだけど。」
お腹抱えて笑う屋嘉部さんに、何だかとっても腹が立った。
「そ、想像しちゃいけませんか!?」
「真那?」
「信じてた、親友にも騙されたんですーーー」

込み上げてくる黒い感情に、屋嘉部さんの顔が見れなくなってうつ向いた。
二人に沈黙が流れる。

「……じゃあ、私がいない間、騙されないように強力な助っ人を紹介しよっ。」
「え?」
「行こ行こ。」

屋嘉部さんはうつ向く私の手を引いてズンズン歩いていく。

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