セカンドデビュー【完】
オーディションを受けたり、ボイストレーニングに通ったりしている間に、あっという間に夏休みは過ぎた。

呼び出されたのは、夏休みも半分が過ぎた日だった。
久しぶりに会う倖太は少しやせていた。
会いたかったよ、と頭を撫でられる。

ランチバイキングでご飯にする。
皿にローストビーフとエビフライをてんこ盛りにして、倖太はにこにこしている。

「エビフライ好きなの」
「好きだよ、自分だと作らないし。揚げ物って準備が面倒で」

倖太の好きなもの、あんまり知らないな。



「……僕は、あんまり倖太のことよく知らないね」
「そりゃそうだ。あんまり聞かないじゃないか」
「それは倖太が僕のことばっかり構うからだろ」

倖太は驚いた顔で「そうかも」と頷いた。

「じゃあ、なんでも聞いて」
「ここ1ヶ月なにしてた?」

「取材受けてた。情報提供が減らないように話題づくりしないと」
「……なにか進展あった?」

「ないな。何かわかったとしても、警察がみんな教えてくれるわけじゃない。鏡原さんはあくまで刑事だから。向こうにも立場がある」
「そう……。君のせいで母さんが疑われている」
「事情を聞かれただけだ。逮捕に至ってないってことは、つまり犯人じゃないってことだろ」
「そうだよね……。それと母さんに、君に会うなって言われてる」
「オレも言われた」
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