セカンドデビュー【完】
旅館を出ると「危ないことはしないで」と琴音が小さく言った。
手を伸ばすと、琴音はそっと握り返してきた。
「……正月に、松本さんと話した。彼が駆けつけた時はもう死んでたって」
「お前のお父さんも「殺してない」って言ってるんだろう。それなら犯人はアヤさんってことになる」
「……そうだけど……」
「どうして松本と会った?」
「呼び出されたんだ。どこまで捜査が進んでいるんだって」
「……みんな知ってて、黙ってたわけだ。琴音、お前も」
事件の当事者なのに、オレは蚊帳の外か。
「倖太。ひとつ聞いていい? なんで松本と寝た?」
「そんなことまで話したのか」
琴音の怒気をはらんだ声に、息がつまった。
「す、好きでしたわけじゃ」
「普通は温泉に行ったからって、男同士でセックスしないんだよ!」
鏡原と玉木がぎょっとして振り向いた。
なんてこと言うんだ。
「そんなつもりじゃ!」
「じゃあなんで旅館なんて泊まったんだ!」
「それは……あいつの車がガソリンなくて」
「だったらタクシー呼ぶとかロードサービス呼ぶとかなんかあっただろ!」
「オレが悪いのか!? 被害者はオレだぞ!?」
「断れよ!!」
「オレにウソついてたお前はなんなんだよ!?」
琴音の罵声がぴたりとやんだ。
……しまった、言い過ぎた。
黙り込んでうつむく唇が震えている。
「……すまないオレが言い過ぎた。松本にホイホイ着いてったオレが悪かった。もうしないから」
「でも、……僕以外の奴とするようになるんだろ」
「……」
「僕たちは兄弟だから、もう元には戻れない。倖太だっていつかは恋人を作って、ほかの奴とヤるようになるんだろ」
「今はそんなこと考えてない」
「今はともかく」
「そのネガティブ思考になんか意味があんのか。今しないといけないことだけ考えよう。未来のことは心配しないで。簡単に泣くな」
「泣いてない」
ゴシゴシと琴音が目元を拭った。
「メシにしよう」
「は?」
「何か食べよう。落ち着くから。な?」
「あー……。二人とももういいか」
「ホモの痴話げんかとか。ちょっと」
「タマテル!!」
「あっ、兄弟ゲンカですね、すみません」
手を伸ばすと、琴音はそっと握り返してきた。
「……正月に、松本さんと話した。彼が駆けつけた時はもう死んでたって」
「お前のお父さんも「殺してない」って言ってるんだろう。それなら犯人はアヤさんってことになる」
「……そうだけど……」
「どうして松本と会った?」
「呼び出されたんだ。どこまで捜査が進んでいるんだって」
「……みんな知ってて、黙ってたわけだ。琴音、お前も」
事件の当事者なのに、オレは蚊帳の外か。
「倖太。ひとつ聞いていい? なんで松本と寝た?」
「そんなことまで話したのか」
琴音の怒気をはらんだ声に、息がつまった。
「す、好きでしたわけじゃ」
「普通は温泉に行ったからって、男同士でセックスしないんだよ!」
鏡原と玉木がぎょっとして振り向いた。
なんてこと言うんだ。
「そんなつもりじゃ!」
「じゃあなんで旅館なんて泊まったんだ!」
「それは……あいつの車がガソリンなくて」
「だったらタクシー呼ぶとかロードサービス呼ぶとかなんかあっただろ!」
「オレが悪いのか!? 被害者はオレだぞ!?」
「断れよ!!」
「オレにウソついてたお前はなんなんだよ!?」
琴音の罵声がぴたりとやんだ。
……しまった、言い過ぎた。
黙り込んでうつむく唇が震えている。
「……すまないオレが言い過ぎた。松本にホイホイ着いてったオレが悪かった。もうしないから」
「でも、……僕以外の奴とするようになるんだろ」
「……」
「僕たちは兄弟だから、もう元には戻れない。倖太だっていつかは恋人を作って、ほかの奴とヤるようになるんだろ」
「今はそんなこと考えてない」
「今はともかく」
「そのネガティブ思考になんか意味があんのか。今しないといけないことだけ考えよう。未来のことは心配しないで。簡単に泣くな」
「泣いてない」
ゴシゴシと琴音が目元を拭った。
「メシにしよう」
「は?」
「何か食べよう。落ち着くから。な?」
「あー……。二人とももういいか」
「ホモの痴話げんかとか。ちょっと」
「タマテル!!」
「あっ、兄弟ゲンカですね、すみません」