セカンドデビュー【完】
お前らのケンカは家でやってくれ、と鏡原はいい、「水原アヤのBMWが見つからない。お前は証拠が車内にあると信じてるんだろ」s
尋ねた。

「はい。ガラスの靴の目撃証言もあります」
「この広大な山中で、3年前に捨てた車をどうやって探す?」

琴音が口を挟んだ。

「土地勘がなかったら、このあたりに捨てようとは思わないはず。母さんは、美香さんの葬式に出てました、死体を捨てて車を捨ててというのは彼女の精神力では無理だったと思います。松本はこの旅館に泊まりにきていたんです。奥多摩湖のダムの駐車場は人目があるし、放置車両があったらすぐに通報されるでしょう。3年も見つからないなら山の中です」

証拠が出ないと信じているから、水原夫妻と松本は美香の死後も普通に暮らしていた。

車が見つかっても問題ないと信じているか、完璧に処分したか。
死体を運んだ車を、売るとは考えにくい。
あるいは廃車にしたか。

「完璧なんて、世の中にないよ。そうでしょうカガさん」

先にご飯にしませんかと玉木は全員車に乗るように促した。




途中の温泉で昼食にする。

刑事二人と民間人で捜査をするのもおかしな話だ。

「犯人の気持ちになって考えてみよう。犯罪に使った車をどこに捨てるか。タマテル」
「湖には捨てないと思います。道路から高さがありますし、ドライバーも落ちる危険性がありますし、対向車に見られないともかぎりません。がけの途中でひっかかって、落ちない可能性もあり、危険です」
「倖太。お前ならどうする」
「……夜中に山中で車を捨てるのは危険だと思うんです。林道に隠して、昼間に沢か谷底に捨てます。この暗さです、怖くてあまり車道からは遠くにいけないと思います」
「確かに共犯者がいたら可能だな。次、琴音くん」

琴音はまばたきもせずに、テーブルの一点を見つめていた。

「僕は」
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