セカンドデビュー【完】
その空き家は、檜原村役場の近くにあった。
檜原街道沿いに民家が立ち並ぶ。
道から少し奥に入った空き家のガレージに、水原アヤが乗っていたと思われるBMWが、ブルーシートを被せられて置いてある。
ナンバープレートが外されている。

「倖太くん、ガラスの靴だ。あれじゃないか」

ガラスの靴は埃を被り、床に転がっている。

下がっていろ、と鏡原はオレと琴音をガレージから出るように指示し、手袋をはめた。
「鍵はないだろう、さすがに」
「応援を呼びますか」
「そうだな。いや、……俺が責任を持つ。割るぞ」
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