異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
ずいずいっ、とキキに迫られてタジタジとなったあたしは、ついコクコクと顔を縦に振った……ら。キキは にっこり笑顔でこうおっしゃいました。
「それじゃあ、ティオンバルト王太子殿下のためにも頑張りましょ。婚約者として腕の見せどころね」
「え~~……っとぉ……」
「まあまあ、ユズ様。手ずからティオンバルト殿下を労う為にお菓子をお作りになられるのですわね?」
キキに続いてなぜか侍女長のミルミさんまで会話に加わり、ハンカチでそっと目頭を押さえてるし。
「ティオンバルト殿下がお忙しくて、なかなかお二人がお過ごしになるお時間がありませんからね。
愛情たっぷりのデザートのお一つお作りになられるのはよい心がけですわ。それがきっかけでお話も弾もうと言うものです」
ミルミさんがそう言うのも無理は無くて、ティオンはあと数ヶ月で国王へ即位するから、今めちゃくちゃ忙しい。
まぁ、確かにあまり話をする時間も取れないのは確かだけど……。
キキはミルミさんの援護を受け、更に瞳を輝かせた。
「そうですよ! ティオンバルト殿下とユズは誰もが認める婚約者同士なんですから。もっとみんなに見せつければいいんですよ。宮廷のお喋りスズメを黙らせる位に、いちゃつけばいいんです!」
キキさんや、キキさんや。
いちゃつけって……アナタ。
宮廷で数多くの人の前でバカップルしろって?
いったい何百人何千人いると思うんですか。
しかも国王陛下の御前ですよ。そんな衆人環視の前でキスでもされたら、羞恥のあまりに軽く死ねますってば。