異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



いつの間にか恋バナ+作戦会議状態になってます、ティオンの離宮In厨房です。


厨房の今は昼食が終わって夕食の準備に取りかかるところ。邪魔だけしてちゃ悪いから、さりげなく雑用を手伝いしながら話し合ってた。


う~む……


あたしはどんなものを作ろうか悩んだ末に、皆さんにご意見をうかがうことにしましたよ。


「わたしはナッツ入りのドライフルーツケーキを焼きます。カレって意外と果物が好きなんですよ」

「私はお茶を入れたちょっと苦みのあるクッキーですわ。騎士団のあの方に差し入れしたいので」


ふむふむ、とメモを取りながらいろんな話を聞いていると、ふと気付いた。


キキもずいぶん熱心に聞き入ってるな、っていうことに。


努力のかいあって文字が書けるようになったからか、簡単な単語を書き込みながら、時々考え込んだり書き直したりしてた。


キキももうすぐ16歳になるから、好きな人ができたのかな?


なんて他の人を気にしてるうちに、いつの間にかみんなは作るお菓子をすっかり決めてしまったみたいで。気がつけばあたしだけメモが真っ白でしたよ。数学の答案用紙並みに。


何やってんだあたしは! と頭を抱えてると、侍女長のミルミさんがコホンと咳払いをしてから口を開いた。


「ティオンバルト殿下は甘いものは不得手ではありませんが、甘過ぎるものとふわふわした食感は生理的に受け付けないようですから、お気をつけて」


ミルミさん(38)ナイスフォロー。あなたはなんていい人なんでしょう!


後ろ手にメモ帳が見え隠れしてるのは見逃してあげますからね。


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