異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



というわけで。


あたしは今、猫とともにお風呂に入ってます。

いつの間にか埋もれた猫は案の定土と砂まみれ。仕方なく家のバスルームで洗うことにした。

(というかいつどんな形で生きた猫が畑に埋もれてたか、考えるだけで疲れそうなのでやめた)


猫用のシャンプーはないから、仕方なく石鹸(手作り)でワシャワシャ洗う。もちろんあたしは素っ裸だ。

この猫はずいぶん大人しい。

抱き上げてお腹を洗おうとしたら、猫の顔があたしの胸元に近づき、フンフンと匂いを嗅ぐような仕草をした。


「これ、気になるの?」


そんなことあるはずないけど、あたしはその先にある傷を指でつつく。猫は首を傾げてたから、苦笑いをして呟いた。


「……これはね……戒めなの。人より目立っちゃいけませんって。あたしはこれで……人間の怖さを知ったから」


指でそっとクロス型の傷を撫でた。一生治らないであろう、薄いピンク色の十字架。


人は、どれだけ理性を無くすことが出来るか……。胸から血を流した8歳のあたしは、痛いほど理解したんだから。


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