虹の架かる橋
毎日、マサを思い出したし、当時マサが付けていた香水の香りを身に付け、マサの声を思い出し、笑顔や、特徴ある話し方を、心の中で忘れずにいた。


そうでもしていないと、正気では居られなかった。



だから、声が聴ける事は、私にとって純粋に、本当に幸せな事だった。



マサは「お酒でも、飲もうよ。」と言って、ルームサービスを頼んだ。


その注文する為の電話のオーダーは、とてもきれいな英語だった…。



私の知らないマサだった。


ルームサービスが来て、ワインを持ってきた。


マサは、グラスにワインを注いで、私に渡してくれた。


だけど、何に乾杯していいのか、お互い分からなかった…。


何か言わなくちゃ、と思い、「久しぶり。」と言って、グラスを軽くぶつけあった。


私は、今見えている全ての事が、夢を見ているように思えてしまった。



恋焦がれて、毎日マサの事を考えて、この想いは私の中で、私が寿命を終えるまで抱く想いだろう、と覚悟していた。


もう逢えないだろうけど、出会えただけで、幸せなんだ…。と思って心に整理を付けていた。



でも、また逢えた……。



< 288 / 305 >

この作品をシェア

pagetop