妖勾伝
「ちょっと、
待てーーー」





繋がる記憶。

溢れる疑問。


それぞれが渦を巻き、レンの思考を混乱させる。



目の前の神月は、ただレンの知りたい真実を語るだけ。


二人を取り巻く闇夜に、レンの渦巻く戸惑いが響いた。






「確かにあの時、
わちを追ってきた物怪を、菰と一緒に闇へと葬った。

だが、わちが盗んだ要石を持っていた男は…
神月、
ぬしではない!」



静かに対峙する神月を見据え、

幼い記憶に漂う、要石を盗んだ男と照らし会わせた。



目鼻立ちも、
何もかもがまったく違うその表情。


一緒なのは、
眼の底に宿る、深い闇だけ…




「それにーーー


ぬしがあの時の物怪だと云うなら、
何故、要石を砕き壊した憎むべきわちを『死なせない』だと…」




神月の矛盾する言葉は、ゆっくりとレンの欲する疑問の答えに重なってゆく。


真実は刃の如く鋭く、レンに突きつけられた。






「何故、貴様に要石を砕かれたこの俺が、
こうしてこの世に存在しているかが、わかるか?」



ーーー神月の要石


そう、

そのアヅの呪縛がかかる要石がこの世から形を消した瞬間、神月も共に闇の藻屑に失せるハズ。


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