妖勾伝
だが、
こうして神月が存在しているという事は、
要石も、世に存在しているという証ーーー





ーーーいったい、
何処に…







再び凪はじめる風は湿気を含んで生暖かく、逆立った神経を更にあわだたせる。


鋼のように鳴る心臓を押し留め、レンはバラバラに形を崩した記憶の破片を、組み合わせようとしていた。





「要石を貴様に砕かれ、藻屑に失せかけている俺に声をかける、慈悲深い瞳の老婆がいてな…」


神月は残り見えるその眼を細め、可笑しそうに笑った。






「その老婆は、俺にこう云ったんだ……


『このままだと、アヅにかけられた呪縛に飲まれ、お前は世から消える事になるだろう。
消えたくなければ、先の争いで右肩に要石を宿したレンを守るんだ…

それが、
お前の生き残る道ーーー』


ってな…」











レンの右肩に刻みつけられた、大きな傷跡。

月の満ち欠けに変化する、レンの闇の力。

要石の存在と共に、姿を世に留める神月。





すべてが、

繋がる
















「わちの……



わちの、
躰に宿った力の原因が、ぬしの力だったと云うのか…?」




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