†あたしだけが知ってる† ~どうしようもないくらい好き~
  あたしは家を飛び出した。

  
  翔太に会いたかった。
  他の誰でもなく、翔太に。


  向かいにある家まで走って
  インターホンを押そうとして
  あたしの指は止まってしまった。


  楽しそうに笑う声が聞こえた。


  みんなで夕飯を食べているの
  かもしれない。


  せっかく楽しい気分でいるのに、
  嫌な思いさせるなんて駄目。


  あたしは手を下ろして、
  そのまま自分の家に戻った。


  あたしは何をしてるんだろう?


  自分の部屋のベッドに寝転がり
  ながら思った。


  いつだって翔太に頼って。


  あたしの場合は頼ってるなんて
  ものじゃないのかもしれない。


  ふさわしい言葉があるのだとしたら
  それは『依存』かもしれない。


  駄目な自分を支えてくれたのは
  いつも翔太で。


  辛いとき会いたいのは他の誰でも
  なく翔太で。


  おかしくなりそう。


  机に置いてあるカッターが
  目に入る。


  あ、ヤバい。おかしく、なる。


 
  


  
  
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