†あたしだけが知ってる† ~どうしようもないくらい好き~
  ねぇ、茜はこんな気持ちだった?


  そのカッターで自分を傷つけていた
  ときこんな気持ちだった?


  辛くて辛くて苦しくて、目の前に
  カッターがあって。


  魅せられるようにぼんやりと
  手を伸ばして。そうこんな風に。


  やり場のない苦しみを痛みで
  紛らわしたの?


  あたしは一度も救えなかったね。


  自分の血が流れるとき貴方は
  何を思った?


  止めて欲しいと願っていたの?


  助けて欲しいと願ってた?


  『一度してしまったらやめられない』

 
  誰かがそう言ってた。


  あたしはずっと、そうずっと。
  『止められない人のほうが悲しい』
  んだと思ってた。大切な人がそういう
  ことをしていて止められないのは悲しい
  と。知っていたから。


  どっちが悲しいとかもう分からない。
  どっちが不幸かなんて考えたくない。


  余計にみじめで悲しくなる。
  同情なんてしなくていい。


  ただ苦しい。ただ辛い。


  もし一人でなかったなら。 
  大切な人の痛みを共有すること
  が出来たなら。

 
  茜はあたしの側にいてくれたの
  かもしれない。


  タスケテホシイ―――――――――。


  素直にそう言えたなら。


  


  
  
  

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