†あたしだけが知ってる† ~どうしようもないくらい好き~
  「いつも通り・・・嫌なこと
  言われ・・ただけ・・・だよ。
  ちょっと落ち込んで・・たら
  茜のこと・・・・思い出して。
  カッターは持ってただけだから。」
  

  心配かけたくない。もう迷惑
  かけられない。


  「びっくりした。お前が・・・・
  カッター見てた時の目がおかしくて。
  お前がリストカットするのだけは
  絶対に嫌だ・・・・・・・・!」


  苦しそうな声。あたしが茜に
  必死で『止めろ』と言った時と
  同じ声。


  やっぱりおかしかったんだ、あたし。
  

  「あたしはそんなことしないよ。
  茜のときでもう見たくもないもの
  だから。今日は何故か勝手に手が
  動いてて。あたしおかしいよね。」


  あたしは絶対にしないよ。

  
  何も出来ないもどかしさを知ってる。
  だから翔太にそんな思いはさせられ
  ないんだよ。


  そう思っていてカッターに手を伸ばした
  あたしは何処かがおかしいのだろうか。


  「全然、全然そういうことしようと
  思ってない奴でも苦しいときに目の前に
  刃物があると変になるんだって。だから
  優姫がおかしいんじゃない。俺はお前の
  親父さんを許せない・・・・・・・!」


  ねぇ、どうしてこんなにも翔太の
  言葉は素直に心に響くのだろう?


  凍りつく心を、引き裂かれる心を
  何度も何度も溶かしてくれるのは
  いつだって翔太なんだよ。


  「あたしは絶対しないよ?」


  ごめんね。苦しませてばっかりで。
  言葉にするのは苦手だけどこれだけは
  ちゃんと言わなくちゃって思ったの。


  絶対にリストカットなんてしない。
  自分も自分のことを大切に想ってくれる
  人も傷付けるだけだから。


  それだけは誓うよ。
  だから、そんな顔をしないで。

  
  
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