ため息をついた日
こいつ!と思ったが、負けじと微笑み返す。
「そうでしたか。本当にここのチーズケーキが好きなので、喜んでいると思います。ありがとうございました。 ところで、彼女は何分位前に帰りましたか?」

「ほんの数分前ですよ。5分も経っていなかったかもしれません。」

「ありがとうございます。また二人で寄らせてもらいます。」

カフェから飛び出し、さっき来た道を今度こそ全力で走る。
(アイツがグダグダと話さなければ、もっと早くに見つけられたかもしれないのに!)
焦りは苛立ちに変わり、その矛先は明らかに優愛に気があるあの男性店員に向く。

「!いたっ!」
少し先をいつもよりゆっくりと歩く優愛の後ろ姿を見つけた。
しかし優愛は、普段通らない川沿いの道へと向かっている。
(こんな時間になんであんなところ行くんだ?)
川沿いの道は街灯が少なく夜はかなり暗い。人通りもあまり無いから、日が落ちてから一人で歩く女性はほとんどいない。

だいぶ近づいた所で、優愛が何かを見上げながら歩いていることに気付いた。
(何を見ているんだ?)
同じように見上げてみて、息をのんだ。

(すごっ!東京って、こんなに星が見えたっけ?)

(そういえば、最初のデートはプラネタリウムだったよな。優愛も同じ事を思い出しているのかも。)
そう思うと、懐かしくもなんとなく照れくさいのと、嬉しさが入り交じった複雑な心境だった。
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