異世界で家庭菜園やってみた
村に唯一ある宿。

悠里とアルバートは、そこに逗留していた。

村にはアルバートの親戚があるらしいが、彼はそこではなく、宿に宿泊している。事情があるのだろうと、悠里も深くは聞かないまま、今に至っている。

有り難い事に、その宿には風呂があり、一日の汗を流すことが出来た。

翌日にはウリエルが来るというその日も、悠里は湯浴みをし、さっぱりとして風呂場を出て来た。

風呂場から宿の本館の間は、少し歩かなくてはならない。

その間には灯りがなく、月もない夜は、あまり夜目が効かず、少し怖い。

その夜も、新月だった。

とっぷりと暮れた夜の闇に、時折鳥の声が響き、悠里はびくりと肩を震わせた。

「早く、帰ろう」

そろそろと、慎重に足を進めている時だった。

衣擦れの音がしたような気がして、悠里はそちらに目をやった。

闇の中に浮かび上がる、白銀の光。

目を凝らさなくても、それが誰か、悠里には分かった。

やや掠れた声で、その人の名を呼んだ。

「アシュラムさん……」







< 134 / 152 >

この作品をシェア

pagetop