異世界で家庭菜園やってみた
「神殿での己の役目を放棄するのか」

「私の役目が異世界から人を召喚することというなら、その役目はもう果たせているでしょう。ようやく、それに気付きました。ユーリが、私をあの空虚な場所から救ってくれた。だから、私はユーリと共にあり続ける」

「……あれだけ、さんざんこの子を振り回しておいて?」

 文句を言い出したらキリがない。

 ウリエルは暴走しそうな己の心を自制するのに苦労した。

 気持ちを切り替えるようにかぶりを振ると、

「ユーリがそれを良しとするなら、俺には何も言うことはない。ただ、国王陛下がどう仰るかは分からないぞ」

「……陛下は許しては下さらないでしょうね。私が犯した罪も含めて。けれど、そんなことはもはや大した問題ではありません。ユーリが私の手を取ってくれた時に、私の心は決まったのですから」

「なら、やってみるがいい。手始めに陛下を説得してみろよ」。

 ウリエルにしては意地悪くも思える提案だった。

「お前がユーリと畑をしたいって言う思いを陛下にきちんと申し上げるんだ。陛下を説得出来たら、誰もお前が神殿を出ることに文句を言わないだろうから」

「……陛下に」

 アシュラムが少し怯んだのが伝わってきた。

(でも、きっとその方がいい)と遊里は思った。

「わたしも一緒に行くよ。アシュラムさん。わたしも、もう一度国王さまに畑の事を話そうと思っていたし」

「ユーリ」

 強張った表情で悠里を見、薄青色の瞳を揺るがせるアシュラムは、恐れているというよりも己に決断を強いているように思えた。

 悠里はそんなアシュラムに勇気を与えたくて、彼の美しい瞳を見つめたまま握る手に力を込める。

 その二人の様子を見て、ウリエルが苦しそうに目を伏せた。

 そこに恋愛感情はないと分かっていても、恋する相手が他の男と手を繋いでるだけで耐えられなかった。

 いくら好きでも近づけない彼女に、こうもたやすく近付くことのできるアシュラムに嫉妬していた。

 自然口調も厳しいものになる。

「ユーリはトーサに戻れ。俺がアシュラムを王都に連れて行こう」

 しかし、その申し出を、アシュラムは丁重に断った。

 さらに悠里までもが「ウリエルさんは忙しいし」だのなんだのと反論している。

(何なんだ。この連帯感)

 唖然とするが、これ以上の言い合いも不毛だとウリエルは「そう言うなら、それでいい」と踵を返した。
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