異世界で家庭菜園やってみた
 この手を離せば、またどこかへ行ってしまいそうで、ずっと手を握り続けた。

 そして、出会って初めて、自分はユーリという人を一人の女性として見つめようとしている。

 感じたことのないぬくもりだった。

 神殿、王宮、この世界のどこにも感じたことのないぬくもりだった。

 彼女を愛したい。

 彼女の傍にいたい。

 ずっと、このぬくもりを感じていたい。

 私の中に沸き起こるこの衝動はいったい何なのだろう。

 彼女を元の世界に返そうとしていた私はどこへ行ってしまったのか。

 そうしてしまわなかった自分を褒めてやりたくなりながら、一度は目の前から消してしまおうとした人の心を、私はひたすらに求めようとしていた。






 ウリエルが合流し、三人はひとまずトーサ村へ戻った。

 朝食もろくに取らずに飛び出してしまった悠里が空腹のあまりに一歩も動けなくなってしまったからだった。

 悠里はウリエルに抱かれるようにして馬に乗せられた。

 申し訳なさそうにしながらも、ウリエルが持っていた砂糖菓子をいくつか貰ったのが良かったのか、悠里はいつの間にか眠ってしまったようだった。

 ほかの男の胸に抱かれ眠る彼女。

 アシュラムはそれを見つめながら、寂しくなってしまった右の掌を見た。

 つい先ほどまで感じていたぬくもりはもうすでになくなってしまった。

 それをとても残念に思う。

 もし許されるなら、このまま彼女を奪い、誰にも邪魔されることのない所へ行ってしまいたい。

 けれど、それでは、彼女を無理やりに元の世界へ帰そうとしていた自分と何ら変わりがない。

 そう思い、アシュラムは自重する。

 そう。今必要なのは、彼女の思いをくみ取り、彼女の心に寄り添うことだ。

 決して暴走することのないように。

 アシュラムはそう自分を諌め、トーサ村へと歩を進めることに専念した。
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