異世界で家庭菜園やってみた
 トーサ村に着いた時には昼をとっくに過ぎた時間になっていた。

「悠里。どうしたの」

 慌てた顔のアルバートに、悠里を横抱きにしたウリエルが食事の用意を頼むと、アシュラムを見た。

「今日はもう王都まで行くのは無理だろう。明日、俺の馬車で送って行こう」

 あくまで事務的な物言いに、アシュラムはふっと笑みを漏らした。

「ありがとう」

 優秀な外務官であるウリエルが、こうして激務の合間を縫ってこの村にやって来ている。

 それだけで彼の悠里への想いが分かるようだった。

 悠里はウリエルをどう思っているのだろう。

 これほどまで親身になってくれる彼を、悠里も頼っているのは確かだった。

 けれど、どことなく感じる二人の間の壁。

 それは意識して築かれているのか。

 それとも無意識?

 ふと考え込んだアシュラムに、アルバートが声を掛けた。

「えっと、ユーリのお知り合いですか?」

「あ、ええ」

「僕、アルバートと言います。ユーリと一緒に畑をさせてもらっています」

 思わぬ伏兵の登場に、アシュラムは瞠目した。

「その……君も、ユーリのことを?」

 そして慌てるあまり、思わず余計なことを尋ねてしまった。

 一瞬何を訊かれたのか分からなかったらしいアルバートは、しかしややして顔を真っ赤にして否定する。

「ち、違いますよ。俺はただ一緒に働いているだけです。ユーリはウリエルさんのだから、僕なんて入り込む余地ないですよ」

 アルバートの何気ない言葉は、アシュラムの胸に鋭い針を刺した。

 傍から見れば、ウリエルと悠里はそう見えるのだろうか。

(これは、相当頑張らなくてはならないみたいだな)

 アシュラムは美貌をしかめ、いかにして悠里の傍にあり続けることが出来るのか。

 そればかりを考える。

 それはまだ、独占欲の強い愛になりきらない恋情。

 けれど、だからこそ、アシュラムの心を嫉妬で染め上げる。

 その嫉妬が悠里を傷つけることのないように。

 自身の内に潜む狂気にも、彼は気付いていた。





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