異世界で家庭菜園やってみた
 謁見の間には、国王と宰相、そして数人の近衛兵が壁際に控えていた。

 皆、アシュラムの姿に息を飲んでいる。

 謁見の間の中ほどまで進むと、アシュラムは悠里の手を外し前へと進み出た。

「謁見をお許し下さりありがとうございます」

 すっと近衛兵が身構えるのを感じた。

(やはり……)

 口元に薄い笑みを浮かべてアシュラムが顔を上げると、国王は兵士の動きを制するように手を上げていた。

「神殿から無断で姿をくらまし、どこにいた?」

 これは謁見ではなく、裁判か。

 そう思うほどに、国王の口調は厳しい。

「ユーリと共に」

 国王の視線がすっと悠里に動く。

 悠里はびくっとして硬直した。

「畑は未だ出来ぬと聞く。いつになれば野菜は採れるのか」

「……え、えっと……」

 緊張のあまり倒れそうになる悠里をそっとウリエルが支えた。

「陛下。今はアシュラムでございましょう」

 ウリエルの飄々とした物言いに国王は気がそがれたのか、アシュラムへと視線を戻した。

 悠里がほっとしたのも束の間、国王の次の言葉がさらに驚愕を与えることになった。

「アシュラムよ、そなたは罪を犯した。わしへの謀反の意志ありとみなし、クムン牢獄での幽閉を命じる」

 その場が凍りついた。

 しばらくの沈黙のあと、ウリエルが声を上げた。

「お待ちください、陛下。アシュラムは確かに無断で神殿を出ましたが、しかし自由が制限されているわけではないはずです。なぜ幽閉という厳しいご処分を下されるのです?」

「わしを襲い、禁書を奪った」

「襲った……?」

 ウリエルが掠れた声を漏らした。

「左様。わしに魔法の力を使い、国王しか入ることの許されぬ宝物庫へ侵入した挙句、禁書を奪ったのだ!」

 国王の怒号があまり広くはない謁見の間に響いた。

 キーンという耳鳴りを感じ、それを振り払うように悠里は頭を振ると声を振り絞った。

「国王さま!きっとアシュラムさんにも苦しい思いがあったんです。それをどうか聞いてあげてください。聞いた上でやっぱり納得いかなかったら、その……法律に従うしかないと思います。でも話を聞く前に判断を下さないでください。どうか、アシュラムさんの話を聞いてあげてください」

 国王はしばらく黙考していた。

 ややして低く唸るように言った。

「聞こう、アシュラム。何か言いたいことがあるか」

 その瞳には冷たい光。それは親が子を見るまなざしではなかった。


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