キミさえいれば
その日の昼休み。


お弁当を持って来ていなかった私は売店にパンを買いに走った。


その帰りのこと。


「白石凛さん」


突然フルネームで名前を呼ばれた。


誰だろうと思って振り返ると、とても背の高い赤い髪をした男子が、壁にもたれて私をじっと見つめていた。


あれ?


もしかしてこの人って、今朝美咲が言ってた転校生?


どうして私の名前を知っているんだろう。


「久しぶりだな」


掠れた声でニヤリと笑う赤い髪の男。


え……?


誰なの………?


こんな人知らない。


「あの、人違いじゃないですか?

し、失礼します」


なんとなく怖くて、その場を立ち去ろうとした時だった。


「広瀬凛」


その男から出た言葉に、ドクンと心臓の音が大きく鳴った。


ど、うして…?


どうして私の前の名字を知ってるの?


一体誰……?


「やっと見つけた。凛……」


その男は壁からむくっと離れると、私の近くにゆっくりと歩み寄って来た。


無意識に足が後退してしまう。


「ハヤトだよ。覚えてねぇの?」


「ハヤト……?」


「そ。お前の家の向かいに住んでた、藤堂(とうどう)勇人(はやと)
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