キミさえいれば
声のする方を向くと、田辺君がびっくりした顔をして私を見ていた。


私はすかさずハヤト君から離れて、田辺君の後ろへ回った。


「コイツ、誰?」


ハヤト君がギロッと田辺君を睨んでいる。


その瞳は突き刺さるように鋭い。


「お前と同じクラスの田辺だよ。

白石は俺の彼女の友達だけど、何か用?」


田辺君がそう言うと、ハヤト君は一歩、二歩とゆっくり私達に近づいてきた。


田辺君は、私を守るように右腕をグッと伸ばしていた。


「凛は俺の幼なじみだ。

久しぶりの再会を邪魔して欲しくねぇな」


「幼なじみ……?

ホントに? 白石」


振り返る田辺君に、私はコクンと頷いた。


「まぁ、いいや。凛。

またあとでお前に会いに行くよ」


そう言うとハヤト君は、ひらひらと手を振って、廊下をゆっくりと歩いて行った。


その後ろ姿はどう見ても、ガラの悪いヤンキーそのものだった。


「白石、藤堂と知り合いだったんだ。

なんかアイツ、ガラ悪そうだけど大丈夫?」


「う~ん。あんまり会いたい相手じゃなかったの」


「だよな。すげぇ怖ぇもん。

あんまり良い感じしないし。

白石、黒崎先輩にこのことを伝えておけよ?」


「え……?」


「先輩なら、ちゃんと白石を守ってくれるはずだから」


田辺君の言葉に、私は急に血の気が引いてきた。
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