キミさえいれば
そうだ……。


ハヤト君は、先輩の事を知ってる。


先輩が私の兄だってこと……。


でも先輩はハヤト君の事を覚えていないはず。


そんな二人が再会したら、どうなるの……?


先輩は生徒会も終わったし、全校集会で舞台の上に立つ事はもう二度とないよね。


名字も変わってるし、私が気づかなかったように、ハヤト君も先輩がたもっちゃんだなんて気づかないかもしれない。


とにかく二人が接点を持たなければ、なんとかなる……。


そうだよ。


だから落ち着いて。


大丈夫よ、大丈夫。


 

その日の放課後。


先輩と一緒に帰る約束をしていた私は、先輩との待ち合わせ場所である三年生の校舎へ行こうと教室を出た。


その時だった。


「凛」


私の後ろで掠れた声が響いた。


私の名前を呼び捨てにする男の人は、この学校に一人しかいなかったのに……。


「ハヤト君……」


ハヤト君はニッコリ笑うと、私の方へ近づいて来た。


「一緒に帰ろうぜ」


「え……?」


「5年ぶりにやっと会えたんだ。
積もる話もあるしよ」


ど、どうしよう。


先輩と約束しているのに。
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