キミさえいれば
「ご、ごめん、ハヤト君。

私、約束があるの。

だから一緒には帰れない」


私がそう言うと、ハヤト君はみるみる怖い顔になっていった。


「約束ってなんだよ? 誰?」


だ、誰って。


い、言えない。


彼氏だとは……。


言ったらなんて言われるか…。


「と、友達だよ…」


「友達って女?」


「ん? うん……」


「じゃあその子も一緒でいいからさ」


うっ、そう来る?


ど、どうしよう。


「あ、いや。

きょ、今日はいいや。

そ、そうだよね。

5年ぶりだし、一緒に帰ろうか……」


「おうっ、そうしようぜ」


そう言うとハヤト君は、私の腕を引いて歩き始めてしまった。


え~ん、せんぱ~い。


会いたいのに~~~。


ごめんなさい……。



学校を出ると、ゴキゲンなハヤト君に色んなところに付き合わされて、やっと家に帰れた時には時計が19時を回っていた。


その日の夜の事。


お風呂から出た後、一人でテレビを観ていたら、玄関のドアがドンドンと叩かれた。


ドキッとしてドアスコープを覗くと、なんと黒崎先輩が姿が見えた。


すぐにドアを開けると、先輩が心配そうな顔をして立っていた。
< 129 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop