キミさえいれば




「栄子ちゃーん。次一緒に歌おう」


「いいですよ。何入れます?」


カウンター席のみの小さなお店で、今日も私はお客様にお酒を作り、会話をし、一緒にカラオケを歌う。


私が働いているこのお店は、いわゆるスナックと呼ばれる系統のもの。


お客様の年齢層も幅広く、女性客なども気軽に遊びに来てくれたりする。


外観を見れば入りにくい雰囲気があるかもしれないけれど、実際に入ってしまえば、安価でお酒が飲めて、ゆっくり過ごせる良心的なお店だ。


私の友人であり、お店のママである優子の人柄の良さもあって、親しみやすく古くからの常連客がとても多い。


一曲歌った後、お客様と話していたら、チリンとお店のドアが開いた。


「いらっしゃいませ」


にっこりと挨拶すると、そこには……。


「やぁ、久しぶりだね」


優しい笑顔のなつかしい人の姿があった。


「洋二さん……」


カツカツと靴音を鳴らし、ゆっくりと歩いて私の前に立つ彼。


「ここ、いいかな?」


空いた椅子を指差してにっこりと微笑むその顔に、少し胸が高鳴るのを感じた。

 
「どうぞ」


私がそう答えると、洋二さんは実にスマートにその席へと腰掛けた。
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