キミさえいれば
「久しぶりね」


「5年ぶり、かな?」


「ウィスキーの水割りでいい?」


「うん」


私の目の前に座る洋二さん。


その姿は、5年前とちっとも変わっていない。


相変わらず優しい瞳の素敵な人だ。


洋二さんがここに来たって事は、きっと凛に会って、この店に私がいるって聞いたのね。


凛ったら、やっぱり保とまだ会っているんだわ……。


「ビックリしたよ。

まさか栄子と凛が、この街に住んでいるだなんて」


そう言って私が出した水割りのグラスを、そっと指でなぞる洋二さん。


「私もビックリしたわ……」


偶然って怖いなと思った。


凛と保が、同じ高校に通っていた事も……。


「なぁ、栄子。

近々お義母さんのところへ引っ越すんだって?」


グラスを手に取り、お酒を口にする姿はどことなく男の色気が漂っている。


「えぇ、保に会ってしまったから……」


私の言葉に、洋二さんはふぅと長いため息をついた。


「保が凛に思いを寄せていたのは、中学の頃の話だよ。

保はもう高3だ。

大学進学も決まっているし、分別もわかる年齢だ。

なんの心配もいらないと思うんだけどな」


洋二さんの言葉に、思わずハッと強く息を吐いた。
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