ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ

そうやって泣きつかれてしまうと 、私は 弱い。

彼を助けてあげられるのは、私しかいな い 、と、ちっぽけな正義感が湧いてしま うん だ。


ものすごく嫌だったけど、最終的に、私 は 消費者金融の無人受け付け扉をくぐっ てい た。

イスに座って、消費者金融のモニターと 向 き合った時、私は死刑囚のような気持 ちに なった。まさか、自分がここに座る 日が来 るなんて、と。しかも、他人の金 を工面す るためにこうしているなんて。

身内の身代わりに罪をかぶった人の心境 は 、こういう感覚なのだろうか、と、考 えた 。


数分間の手続きを経て、私は10万円と いう現 金を借りた。

バイトしかしていない大学生に、身分証 明 書ひとつでこんなにもアッサリお金を 貸し てくれる場所があるなんて思わな かった。

ミチはたくさん借金していて、これ以 上、 消費者金融を頼れない立場だった。


無人受け付け窓口のそばで待っていたミ チ に10万円を渡すと、彼は私を抱きし め、

「ありがとう、ヨウ!愛してる!」


どこからもお金を借りたことのない私 は、 金融会社全体からの信用もあるらし く、ミ チみたいにブラックリスト入りも していな いから審査にも簡単に通ったの だと、彼は 言った。
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