ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ
ミチには裏の顔があった。
多分、店の人はそれを知らない。私だけ し か知らないことのはずだ。
ミチは、パチンコ依存症とも言えるくら い 、パチンコに目のない人だった。
彼の金銭感覚がおかしいことを知ったの は 、付き合って二週間くらい経った頃。 ミチ とドライブに行った日のことだっ た。
男性とドライブに行くなんて今までほと ん どなかったから、私は胸を弾ませ助手 席に 乗った。
ミチの車。ミチの運転。運転する横顔 も、 仕事中とは別のかっこよさがある なぁと見 とれていた。
休憩することになり、途中、ファミレス の 駐車場に入った。
シートベルトを外し、なにげなく後部座 席 に目をやると、シートの上に大量の封 筒が 捨てるように置かれていて、私は じゃっか ん戸惑った。
封筒の色は茶色や水色、薄緑色、と、 様々 だった。
積みすぎて足場に落ちているものもあっ た 。
「すごいね、全部手紙?」
デート中の話題作りに、と、そう口にし た 私が間違っていた。
他人の私物の件には安易に触れてはいけ な いのだと、私は後で気付くことにな る。
「ああ、それぜんぶ、借金の督促状」
接客する時みたいに爽やかな口調と顔つ き で、ミチは告白した。