ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ
借金……。後部席の封筒の山を見 て、嫌 な予感はしていたが、『やっぱりか 』と 思った。
昔のことが、脳裏をよぎる。私の実の父 も 、パチンコのせいで借金を作ってい た。
私に借金のことを知られて理性がとんだ の か、それからのミチは、そうするのが 当然 かのように私にお金の無心をした。
「絶対返すから!」
ミチのことが好きだったから、断れな かっ た。断ったら気まずくなると思い、 少ない 貯金からミチに貸した。
嫌われたくない一心でお金を貸していた け ど、私の貯金にも限界はある。
ウチは金持ちではないし、バイトで稼い だ お金しかない。それにまだ学生だ。
ミチの借金は、減るどころか、増えてい る のかもしれない。
私から借りたお金を借金の返済に当てて い るわけじゃないと知ったのは、ミチに お金 を貸すようになったすぐ後だった。
ヒマがあると、ミチはパチンコ屋に行 き、 スロットを楽しむ。
「いつか一緒になるんだからいいじゃ ん」
私からお金を借りる時、ミチは優しい口 調 でそう言うようになった。