だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
なんとか席に戻って、優希に気付かれないように顔の筋肉を使う。
まだ優希は気が付かないだろう。
外で使う顔を作ることは、私の特技と言ってもいいかもしれにない。
さっきまでと変わらないおしゃべりを続けながら、一人で考えていた。
もし、湊が帰ってこなかったら。
今まで信じていたものが、何もかもなくなってしまうんじゃないだろうか。
私が時折不安に感じていることが、現実になってしまうんじゃないだろうか。
そんなことばかりが頭を巡っていた。
無意識に出口の方へ目を向けたり、背中を通り過ぎる人影に意識を向けたりしていた。
「ねぇ。時雨ペース速くない?そんなに飲んで大丈夫?」
「ほんとに平気。お父さんもお酒強いし、遺伝かな。優希はゆっくり飲んでね」
「うん・・・、わかった」
心配そうに顔を覗く優希にゆっくりと笑いかけて、お酒を流し込んでいく。
お酒が身体に入る度、頭の中が冷静になっていく気がした。
それと同時に、やりきれない感情が湧き上がってくるのも感じていた。
そんな私の様子を優希はじっと見つめていた。
態度があからさまに変わった私に、何か違和感を感じているようだった。
「時雨、何かあっ・・・、あの――――」