だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
優希が私を気遣ってくれているのがわかる。
何でもない様に返事を返す湊。
明らかに不機嫌な声と口調だったくせに。
申し訳なさも心に混ざって、私の気持ちはどうすることも出来なかった。
「湊君、この子達知り合いなの?随分可愛らしいお知り合いねぇ」
しがみつくようにして、その女の人は湊の耳に顔を寄せた。
顔を真っ赤にしてお酒が回っている様子だった。
さっきの会話を知っているだけに、本当かどうかは怪しいものだ。
「あぁ、義妹とそのお友達。こっちが義妹の時雨。で、こちらが優希ちゃん」
義妹(イモウト)。
当然だけれど、そんな記号で呼ぶのはやめて欲しかった。
片方の手で女の人を支えているくせに、そんなに優しく私の肩を抱くのは反則だと想った。
湊が触れるだけで、そのぬくもりが私の気持ちを溶かしてしまいそうだった。
私と優希はそれぞれ簡単に会釈と挨拶をした。
「えぇ!?湊君、妹さんがいたの?可愛い~」
女の人は湊に更にしがみついていた。
その光景を見ていられなくて、愛想笑いを浮かべたまま目を逸らしてしまった。
そんな不自然な様子をすれば、目聡い優希はすぐに気付く。
分かっていても、自分の行動を制御することなど出来なかった。