だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「それで幸せになれるの?どうして私じゃ駄目なのよ。もっと大切に出来るわ。もっと、貴方のためを考えてあげられる」




真っ直ぐに響いている。

誰よりも圭都を大切にしたいのだ、と。




「傍にいて、支えていたいのよ。どうしようもない時に、圭都の苦しさを和らげたいのよ」




少しだけ、声が揺れた。

泣いているのかもしれない。

杉本さんが見せる、私が見たことない『圭都だけが知っている顔』なんだろう。




「・・・二番目でも、構わないわよ。辛くなった時に、頼ってもらえる存在でいたいのよ」




ヒールの音が鳴った。

服が触れ合う、衣擦れの音がした。


壁が少しだけ揺れたて、圭都と杉本さんの足元の影がかさなっていた。




「どうして、それさえ許してくれないの?苦しいのよ・・・何とかしてよ」




掠れた声は私を苦しくするばかり。

けれど、そんな杉本さんの声がどんどん聴こえづらくなっていくことの方が、私を苦しくさせた。


盗み見た足元の影は一つになって見えた。




圭都が、きっと抱き締めている。

それが圭都の優しさなのだと、私が一番知っている。




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