だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「ごめん」




どうして隠れたままなのか、自分でもわからなくなっていた。


けれど今更どんな顔をして出て行けばいいのか。

それすらも分からなかった。




「・・・いっそのこと、嫌いになってよ」




くぐもった声は、涙で濡れた声だった。

悲痛な声。




「ごめん」




圭都は、静かな声でそう言った。




「嫌いになって。それで、忘れないでいてよ。普通にされることのほうが苦しいわ」


「ごめん」




『ごめん』以外に何も言わない圭都が何を考えているのかわからず、少しだけ不安になった。

こんな時に杉本さんのことを考えてあげられない自分の考えでさえ、傲慢なものだと知っていても。




「どうにも出来ないのよ。こんな風に、縋るつもりなんてなかったのに・・・」


「ごめん」


「圭都のせいじゃないのも、誰かが悪いわけじゃないのも。本当はわかってるのよ」


「いや、それは俺が悪いんだ。ごめん」


「どうしてこんなに、貴方のことばかりが頭を回るの?こんな風になりたくないのに」


「うん」


「ただ、好きなのよ。圭都が、好きなだけ」




真っ直ぐ響く、綺麗な声。

本当の杉本さんに触れた気がした。


こんなにも女らしくて、こんなにも感情豊かな人だったなんて。

知らなかった。




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