だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「大切な人が、います」
圭都と目が合った。
不安そうに揺れる目に、そっと笑って見せる。
「その人はもういなくなってしまいました。もう、二度と逢うことは出来ません」
沈黙ばかりが責め立てる。
杉本さんが圭都の服を強く掴むのが見えた。
「確かに、杉本さんのように『一人だけ』を見つめることは出来ません」
圭都が静かに目を逸らす。
ごめんね。
でも、聴いて欲しい。
「ですが『三人』で生きていけるのは私だけです。誰にも埋められない圭都の気持ちを、一緒に埋めていけるのは私だけです」
『三人で』。
圭都がくれた言葉。
私が今。
一番大切にしている言葉。
「三人・・・?誰にも埋められないって・・・」
「ごめん。俺たちにしか分からないことなんだ」
そう言って圭都は手を離した。
杉本さんとの距離をしっかり取って。
「非道いよな、俺」
「圭都――――」
「ごめん。もうそんな風に呼ばせるわけにもいかないんだ」
「・・・どうしても、駄目なのね」
「もう何もしてやれない。ごめん、杉本」