ORANGE SNOW
少女の言葉にスノウは呟くように静かに答えると、手を握り締めた。

「消えなさい。
そして私はもう戻らないと、伝えて頂戴。
炎獄、貴女も目を覚ま…」

一同がスノウの言葉に怪訝そうに首をかしげていると、突然少女が高笑いを始めた。
部屋中に響くその声に、きらと蓮華が身をすくませセルリアに抱きつく。
セルリア自身も息を飲み、二人を抱き締めた。

「目を覚ませ、ねえ?
元から覚めてるつもりだけど?
この炎獄は、この力をくれたあの「機関」を、すごくすごく愛してるんだよ」

炎獄、と呼ばれた少女は愉快そうにそう言うと、剣をスノウに向けた。
それを見てリヴィアスは腰に掲げた細身の剣を抜き、素早くスノウの前に立ち塞がる。
剣なんて魔法よりうまく扱えない、だがこのままだとスノウの危険を感じての判断だった。

「リヴィアス…ッ」

「なんだよあんた。
そこの白いの――霙(みぞれ)を庇うつもり?」

「霙とか庇うとか知らねーけど、目の前で人が拐われそうになってんだ。
誰がそのまま黙って見てると思うんだ」

炎獄の剣に力まかせに自分の剣をぶつけ、炎獄が窓の後ろに倒れかかった時――、


「鋭磨がれた純潔なる水の乙女よ、我が手にその鋭き力を!
―――――ッアクアランス!!」


さくらが素早く詠唱しそう叫ぶと同時再び水の刃が現れ、炎獄を窓の外へと押し出した。
< 103 / 123 >

この作品をシェア

pagetop