ORANGE SNOW





―――――――・・・


酷く匂うところだった。
後ろで歩いているさくらも、手を鼻にあて青ざめた顔をしていた。
リヴィアスの前を歩くスノウも、いい気分ではなさそうだった。

町の裏路地に入り、入り組んだ道をひたすら歩いていた。
ゴミは散らかり、飢えて死んでしまった人が転がっていたり、次第に下水が流れる音がし、汚物の匂いが混じってきた。
不衛生すぎて、吐き気がした。

「こんなところにあるのか?」

「ええ」

頷いてみせたスノウは、時々立ち止まり、一歩一歩思い出すように歩く。
そんなスノウに、さくらは顔をしかめて呟いた。

「酷いところね」

「まあ、ここは。
暁は町の下にあるから、こんな不衛生ではないわ」

まあ衛生だろうが不衛生だろうがどうでもいいよ、とリヴィアスがうなだれたように言うと、ふふっと笑われた。

暫く歩いたあと、赤いレンガの壁の前でスノウは立ち止まった。
それに続いて二人も立ち止まり、首をかしげる。

「ここよ、魔法で塞がってるけれど」

「じゃ、壊せばいいんだね」

その言葉にさくらがいち早く反応し、魔法を唱える構えを見せた。
それをすぐにリヴィアスが頭をたたき、止める。

「ばっか!
騒ぎ起こしてどーすんだ、慎重にいくに決まってんだろ」

「えー」

言い争う2人を置いて、スノウは少し悩んだ仕草をすると、壁に手をあてた。
そして、小さく呟く。

「IDコード名、此方"霙"。
ゲートの解放を願います」



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