ORANGE SNOW




「―――――やめなさい!」

そう聞こえたと思うとざばあ、と水が荒れる音がし、一気に体が冷えていく感触がした。
そして息が、呼吸ができなくなる。
目を開けてられず思わず目を閉じたが、慌ててた為か水を飲んでしまった。

おぼれる。死んでしまう。

そう、よぎった時だった。

「刹那にて宿りし寒空に舞う雪の娘、氷結にて現せ!
フリーズフラウ!」

さくらの素早い詠唱の呪文が小さく耳に入り、思わず目を開いた。
ぴきい、とリヴィアスの周りの水が凍りつき、硝子が割れるような音が響いた。
自分の周りから水が引いていくのを感じる。

何がなんだかよくわからないが、水から解放され、どすん、と床に体が叩きつけられた。

「げほっ・・・!」

同時、飲んでしまった水を吐き出すように咳き込んだ。

「リヴィアス・・・!」

すると水に飲まれたはずのさくらが、ぬれた髪を揺らして近寄ってきた。
優しく体をさすってくれるさくらに、リヴィアスは顔を歪めて小さく呟いた。

「なん、で・・・」

「スノウが、あの現れた水の周りに氷の膜を中に咄嗟に張ったの。
少しぬれたけど私達は大丈夫・・・リヴィアス、痛いところは?」

さくらはそう言いながら、治癒魔法の詠唱を小さく呟いてかけ始めた。
冷えていた体が温まっていくのを感じながら、リヴィアスはスノウの姿を探す。

スノウは、その白いマントを揺らして、あの小さな少女の前に立っていた。

「・・・ずいぶんな挨拶ね、"雨あられ"」

「み、ぞれ・・・」



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