ORANGE SNOW
「おねーさん!」

「おっと、きらお嬢様―いえ、化け物。
大人しくしてください」

兵士から逃げようとしたきらはすぐに抑えつけられ、さらに兵士の言葉でようやく柔らかくなっていた表情が再びあの泣きそうな表情に戻った。

「化け…物?」

「それ以外に何がありましょうか」

馬鹿にしたように兵士は言うと、周りの兵士に顔でセルリアを指した。
それを合図に兵士達は武器を奮いあげ、襲いかかってきた。
それを後ろへ下がり避けるとセルリアは―何かが爆発した。

「…ごめん、もう無理だわ」

そう静かに呟くと同時、セルリアの周りに静かに小さな風が吹き始めた。
その異様な光景に気づいたのか、兵士達は身を引かせる。

「な…!」

「我が中に眠る小さな嵐よ、今糧となり力を与えよ!」

兵士が怯んでいる隙にセルリアは履いている赤い靴をこつ、と鳴らすと―ひゅおっとうなり、靴の先に薄い『風』の刃が現れ、靴自体が風を帯びた。
そして脚を上げ、一人の兵士を一気に凪ぎ払った。
兵士は風の刃を受けたように傷があらわれ、扉の外へと一気に吹き飛ばされる。

「…な、ま、魔法!」

戸惑った声が飛び交い、兵士達全員がセルリアと距離をとった。
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