ORANGE SNOW
蓮華は覆い被さったままのさくらを抱き締め、そう叫び―、そしてそのまま荒々しく言う。





「あたしの力よ、唄えええぇええッ!」





「蓮華!」

その変化に気付きようやく状況を理解したリヴィアスは二人に近寄ろうとしたが、すぐに足を止めた。
蓮華とさくらの周りに、線―まるで楽譜に刻まれた五線―が現れ、りーん、とした音が鳴り響いていた。

「な…ッ」

魔法に見えたが魔力も感じず、見た事もない。
驚きを隠せなかったが、ふと少女を見ると、―頭を抑えて地面に座り込んでいた。
少女は小さく呻き声をあげていたが、リヴィアスには何が起こったかわからない。

そういえば。
さくらの言葉を思い出す。
さくらは蓮華を『空気の奏者』と呼んだ。
言われた当初は意味がわからず首をかしげたが、もしやこれが蓮華の力ではないだろうか。

空気を奏でる、つまり、『音』。
直接誰かを傷つけるのではなく、内側に響く、音の力。

蓮華の叫びと共にその力が現れ、今少女に何らかの効果を与えてるとしたら?

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