first Valentine
和夫の墓にたどり着いたフミは、手袋をはずし、素手のまま墓石に残る溶け始めた雪を払い落した。
「冷たかったでしょう? すみません」
しわの多い節が浮きだった手を赤くしながら、フミが語りかける。
それから、フミは持参した花を飾り、ろうそくに火を灯した。つぎに線香を焚きしめると、赤くなった両手をそっと合わせ、目を閉じる。
和夫さん。
今日は私、あなたに贈り物をお持ちしたんですよ。
今日はバレンタインデーというのですって。
ハイカラでしょう?
和夫さんは知らないでしょうけれど、私からあなたに想いを込めた贈り物ができる日なのですって。
だから、私初めてチョコレート菓子を作ってみたんですよ。
……あなたを想って。
フミは声には出さずに和夫に語りかけると、巾着袋から小さな包みを取り出した。
カサカサと半紙の開かれる音だけが聞こえる。
「召し上がって、いただけますかしら?」
フミは小さな声で話しかけた。
まるで片恋の相手に話しかけるような戸惑いがちな声で。
「冷たかったでしょう? すみません」
しわの多い節が浮きだった手を赤くしながら、フミが語りかける。
それから、フミは持参した花を飾り、ろうそくに火を灯した。つぎに線香を焚きしめると、赤くなった両手をそっと合わせ、目を閉じる。
和夫さん。
今日は私、あなたに贈り物をお持ちしたんですよ。
今日はバレンタインデーというのですって。
ハイカラでしょう?
和夫さんは知らないでしょうけれど、私からあなたに想いを込めた贈り物ができる日なのですって。
だから、私初めてチョコレート菓子を作ってみたんですよ。
……あなたを想って。
フミは声には出さずに和夫に語りかけると、巾着袋から小さな包みを取り出した。
カサカサと半紙の開かれる音だけが聞こえる。
「召し上がって、いただけますかしら?」
フミは小さな声で話しかけた。
まるで片恋の相手に話しかけるような戸惑いがちな声で。