嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

弱々しい声でそう言ったエリカが、力なくベッドの中へと戻っていく。

熱があるのに無理して立とうとするから、余計に気分が悪くなったんだろう。

「わかったから…少し眠ってろ」

目を伏せたまま小さく頷いたエリカは、安心したのかすぐにまどろみはじめる。

およそ二年のあいだ、エリカは寧々のために、こうして自分を犠牲にし続けてきたのだろうか。

こんな細い身体で寧々を守ってきたのかと思うと、胸がじわじわと熱くなってくる。

(…今日ぐらい、ゆっくり休めよ)

言えない言葉を心で唱えて、ゆっくりエリカの顔に手を伸ばす。

まるで慈しむように、俺は優しくエリカのおでこに触れていた。



「待て寧々、うどん熱いからな。冷ましてからだ」

「うんっ」

余程お腹が空いていたのだろう。

寧々は見知らぬ俺がキッチンで料理している姿をじっと見つめ続け、うどんが出来上がると勢いよく突進してきた。

「ふー、ふー、…はぐっ」

「うまいか?」

口いっぱいにうどんを詰め込んだ寧々は、満面の笑顔を俺に向け、何度も頷いている。

途中詰まらせそうになりながらも、あっという間に俺の作ったうどんを完食してしまった。

「ごっちゃまー」

おそらくごちそうさまと言いたかったのだろう。

可愛い間違いに、つい俺までつられて笑顔になってしまった。

「おにーちゃん、おなまえは?」

「しょうただよ」

「…しょーちゃん?」

「…そう…」

やばい。可愛くて思いきり抱きしめたい。

なんせ寧々は、エリカをそのまま小さくしたような容貌をしている。

…俺に似てるところなんて、一つも見つけることができていないのに。

目の前にいる小さな存在に、俺はどうしようもない愛しさを感じていた。

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