嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

エリカが眠っていることを思いだし、寧々の前で人差し指を立て“しーっ”と小さく囁く。

恐る恐る寝室を覗くと、身体を起こしたエリカとバッチリ目が合ってしまった。

「調子はどうだ?」

「…まだいたの」

またエリカに冷たい態度を取られて、浮上しかけていた心が一気に沈んでいく。

「いるに決まってるだろ。…熱は…」

「…やっ…!」

ついさっき触れた調子でおでこに手を伸ばしたら、ぱしんと手を叩かれてしまった。

「……あ、っ…」

エリカは小さく声を発すると、そのまま気まずそうに下を向いてしまう。

(…ヤバイ。今のは結構キツイな)

俺はもう、エリカに触れることすら許されない。

それでも構わないからそばにいさせてほしいなんて、図々しいにも程がある。

…でも俺は…。

「しょうちゃーん!」

後ろから駆け寄ってきた寧々が足に絡まってきて、俺に抱っこをせがむ。

「なに…しょうちゃんって…」

「俺の名前だろ。もう忘れた?」

寧々と仲良くする俺に、エリカは複雑そうな表情を向けてくる。

…もう、お前のことを失いたくないから。

悪いけど、諦めてなんてやれない。

「…翔太でしょ」

「……!」

「それぐらい覚えてる」

卑怯でもなんでもいい。

…俺はただ、エリカのそばにいたいだけ。

< 112 / 259 >

この作品をシェア

pagetop