嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
エリカが眠っていることを思いだし、寧々の前で人差し指を立て“しーっ”と小さく囁く。
恐る恐る寝室を覗くと、身体を起こしたエリカとバッチリ目が合ってしまった。
「調子はどうだ?」
「…まだいたの」
またエリカに冷たい態度を取られて、浮上しかけていた心が一気に沈んでいく。
「いるに決まってるだろ。…熱は…」
「…やっ…!」
ついさっき触れた調子でおでこに手を伸ばしたら、ぱしんと手を叩かれてしまった。
「……あ、っ…」
エリカは小さく声を発すると、そのまま気まずそうに下を向いてしまう。
(…ヤバイ。今のは結構キツイな)
俺はもう、エリカに触れることすら許されない。
それでも構わないからそばにいさせてほしいなんて、図々しいにも程がある。
…でも俺は…。
「しょうちゃーん!」
後ろから駆け寄ってきた寧々が足に絡まってきて、俺に抱っこをせがむ。
「なに…しょうちゃんって…」
「俺の名前だろ。もう忘れた?」
寧々と仲良くする俺に、エリカは複雑そうな表情を向けてくる。
…もう、お前のことを失いたくないから。
悪いけど、諦めてなんてやれない。
「…翔太でしょ」
「……!」
「それぐらい覚えてる」
卑怯でもなんでもいい。
…俺はただ、エリカのそばにいたいだけ。