隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
アウェーだ。
ホームなのにアウェー気分。

とりあえず
お茶でも入れよう。

和室から聞こえる、楽しそうな声を耳に入れないように、台所でコーヒーをセットしていると。

「紀之が入れる紅茶が飲みたい」
桜ちゃんと手を繋いで和室から出てきて、杏奈さんは大きな声で彼に言う。

彼は「はいはい」って言いながら台所に入って来て、「僕がやりますよ」と私の肩に手をのせた。

「もうコーヒーのセットしちゃった」
面白くない声を出すと

「逆らったらうるさいので」
って、優しく私の頭を撫でる。

私だって
逆らったらうるさいんだよ……言ってやりたかったけど、彼の親戚だし、桜ちゃんとも仲がいいから言えなかった。

お茶菓子を持って
桜ちゃんと話をしている杏奈さんの前に出すと

「桜のお気に入りのぬいぐるみ増えた?持ってきて見せて」
桜ちゃんの背中を軽く叩き
桜ちゃんを二階に向かわせた。

彼は台所
桜ちゃんは二階。

ツーショットは嫌だな。

お茶菓子を出した私が、ちょっとためらってると

「座れば」
そう言ってブランド物のバッグから煙草を取り出し「灰皿」と、私に言葉を追加する。

「灰皿ないんです」
杏奈さんから離れた場所に座って返事をすると、驚かれた。

「灰皿ないって?」

「はい」

「ヘビースモーカーの紀之の家に、灰皿がないって?」
爆笑していた。

ヘビースモーカー?
彼が?
目を丸くして台所をそこから覗くと

「紀之がヘビースモーカーって知らなかった?」
身を寄せて杏奈さんが私に言う。

私は正直にうなずくと

「もっと知らないことが沢山あるかもね」
鼻で笑って
綺麗な顔をイキイキと輝かせる。

本当に嫌な感じ。



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