隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
「すぐ戻るから」優しく彼が言い

「いってきまーす」と桜ちゃんが言う。

そして杏奈さんは私の顔を見ず、玄関を出る。

家の窓から覗くと
杏奈さんは彼の腕に手を絡めようとして、彼に頭を突っつかれ、あきらめて桜ちゃんと手を繋ぎ、桜ちゃんは彼と杏奈さんの真ん中になって、三人で手を繋げて家を出る。

家族みたい。

誰も居ない家
急に寂しさと虚しさが私を襲う。

『家政婦でもやとえばいいじゃない』って何?

私は彼の奥さんで
彼に愛されていて
桜ちゃんだって
私の事を好きで

自分で自分に強く言い聞かせないと、心が崩れそう。

カップを下げようとすると
杏奈さんの残り香が余計私を苦しめる。

ファブリーズしよう!
一本使い切ってもいいわ。

悶々とする心が痛い。



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