齧り付いて、内出血
「ああ、そういえば。その指輪、彼女とお揃いとかじゃないよ。」
『そう、なの?』
「そ。彼女つくる暇、ねえから。」
そうだよね。
デートしたり、色々気を遣うのが面倒だから彼女をつくらないで私とこんなことしてる。
今更傷ついてる私は卑怯だ。わかってたくせに。
「上司に‘そのなりだといかにも薄情そうだからこれでもつければ少しは身持ち固そうに見えるだろ’って右手の薬指とかいう意味深な場所につけられた。」
「そのなりってどんななりだっていう話。」
『…。』
「ここは否定するところなんだけど。」
『それはできない。』
薄情そうって、間違ってないと思う。
ほら、またそんなニヒルな笑い方して。
「お前も彼女の存在とか、気にするんだ。」
『だって手にこんな内出血あったらおかしいじゃん。』
「あー、確かに視線集まるかも。」
『うそ。』
「ほんと。」