苦恋症候群
「あ」
しばらくその場で他愛もない話をしていると、不意にヤスが、私の頭を飛び越えた向こうを見て小さくつぶやいた。
つられて、その視線の先をたどる。すると階段の上にいる人物が目に入り、どくんと心臓が音をたてた。
「お疲れさまです」
「おー、お疲れ」
「……お疲れ、さま」
5階から階段を下りてきたのは、三木くんだった。
一瞬だけこちらに視線を向けたものの、すぐに逸らされる。
小さく会釈しながら、何の感情も見えない冷めた表情で私とヤスの脇を通り過ぎていった。
完全に彼の姿が階段の下に消えたのを見計らい、こっそり息をつく。
すると隣のヤスが、なんだかおもしろくなさそうな顔で口を開いた。
「今のって、前永田支店にいた三木だよな?」
「あ、うん。そうだよ」
「ふーん……なぁんかスカしてるよなあ、アイツ」
「……そう?」
まるで高校生みたいなことを言うヤスに、思わず苦笑する。
くちびるを尖らせながら、さらに彼は続けた。
しばらくその場で他愛もない話をしていると、不意にヤスが、私の頭を飛び越えた向こうを見て小さくつぶやいた。
つられて、その視線の先をたどる。すると階段の上にいる人物が目に入り、どくんと心臓が音をたてた。
「お疲れさまです」
「おー、お疲れ」
「……お疲れ、さま」
5階から階段を下りてきたのは、三木くんだった。
一瞬だけこちらに視線を向けたものの、すぐに逸らされる。
小さく会釈しながら、何の感情も見えない冷めた表情で私とヤスの脇を通り過ぎていった。
完全に彼の姿が階段の下に消えたのを見計らい、こっそり息をつく。
すると隣のヤスが、なんだかおもしろくなさそうな顔で口を開いた。
「今のって、前永田支店にいた三木だよな?」
「あ、うん。そうだよ」
「ふーん……なぁんかスカしてるよなあ、アイツ」
「……そう?」
まるで高校生みたいなことを言うヤスに、思わず苦笑する。
くちびるを尖らせながら、さらに彼は続けた。