苦恋症候群
「……ごめんね、遥」



落とされたつぶやきはとても小さかったけれど、たしかに、耳に届いた。

彼女の細い指先が、俺の頬に触れる。



「ほんとはね。ずっと、ガマンしてたの」

「え」

「あたしは、遥の“姉”だから。こんな気持ち、持ってちゃいけないって。この気持ちは、伝えちゃダメだって」



でも、と。

雪妃の顔が、泣き出しそうに歪む。



「でも、すきなの。あたしはずっと、最初から、遥のことがすきだったんだよ……っ」

「ゆき、」

「遥がどんどん、大人になってくから。あたしの手が届かない、知らない人に、なってくから……だから、もう、黙ってなんかいられないよ……っ!」



彼女を見上げたまま、言葉を失った。

……雪妃が、俺のことをすき?

家族としてじゃなく……男と、して?
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