苦恋症候群
今年の夏、三木さんにキッパリ振られたときも、ヤマくんにはちゃんとすぐに報告した。

仕事終わりに、お互いの家の中間地点にあるファミレスで待ち合わせて……三木さんのことを諦めると伝えたあたしは、たぶんそれほど“カワイソウな女”には、見えなかったと思う。

ちゃんと、強がれていたはず。今までだって散々かっこ悪い姿を見られてたから、最後くらい、気丈にしていたかった。


今だって、ほら。涙ひとつ、見せないでいられている。



「森下さんって、女のあたしから見てもかわいくて、素敵な人だよ。あたしだって好きだもん」

「……へぇ」

「だから、三木さんが惹かれるのも、納得できる。ふたりが恋人同士になれて、本当に、よかったと思ってるよ」



ぽつぽつと口からこぼれる言葉たちは、本心だ。

森下さんは最初あたしがあんなひどい態度をとったのに、いつも誠実に接してくれてた。

同性としても、すごく魅力的な人だなって思ったの。

だから、あの人が三木さんをすきだと知って、背中を押した。……三木さんが、いっそもう自分の手が届かない存在になればいいっていう不純な気持ちも、たしかにあったけれど。

だけど心から、ふたりにしあわせになってもらいたいと、思ったんだよ。
< 333 / 355 >

この作品をシェア

pagetop