苦恋症候群
ヤマくんは、大事な同期で。あたしの、良き相談相手。

だけど、本当は少しだけ、苦手なんだ。


あたしはいつだって、彼のまっすぐな瞳や言葉に、泣きたくなってしまうから。



「な……に、言ってるの。あたしは、大丈夫だってば」

「葉月、」

「だいじょうぶ、ほんと、だいじょうぶなんだから……っ」



つぶやきながら、言葉とは裏腹に、目頭が熱くなってくる。

必死で隠そうとするけれど、ヤマくんはやっぱりメガネの奥から、じっとあたしのことを見つめていて。

いつの間にか、彼とさよならするはずの分かれ道までたどり着いていた。



「……葉月は、馬鹿だな」



どちらともなくT字路で足を止めたところで、ぽつりとヤマくんが言った。

必死で涙を堪えながら、その顔を見上げると。彼は小さく、笑っていた。



「どうせこの後誰もいない自分のアパートに帰って、誰にも知られないように、ひとりで泣くんだろ?」



違う、と否定したいのに、口を開いたら涙がこぼれそうで、ただ彼を睨みつけることしかできない。

だって、泣きそうになってしまっているのはヤマくんの言葉のせいだ。

あんなふうに、核心をつくようなことを言われなかったら。あたしはこのまま、泣くこともせずに自分の気持ちを殺して……ただ三木さんと森下さんのことを、祝福できたのに。
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